2004年12月24日

創作お話「花を探しに」

「創作お話」は「まんがまんだら」の掲示板に遊びに来てくださった方から
「お題」を三ついただいてこれを元にお話しをつくってる「三題話」です。


「花を探しに」
(じんちゃん、ひじかたさんからいただいたお題「ゲルマン」「じゃがいも」
「ぞう」より)

昔々のその昔、ゲルマンの地でのお話。
少女ピアは、森を抜け向こうに見える高い山を目指して歩いていました。
食糧のジャガイモ数個と、護身用と獲物を捕るための矢筒背負い弓を持って。
その姿はまるで少年のようでした。

「あたしがあんな事言ったからだ・・・。」と、最後に許嫁パルの顔を見た日の
ことを思い出してました。
その村では、春になると次の春が来る前に許嫁と結婚するつもりの男は
森の奥深くにだけ咲く青い花を採りに行くのが習わしでした。
その花で白いショールを青く染め、許嫁に贈るのです。
婚礼の日、花嫁はそのショールをまといます。
染めた青い色が濃ければ濃いほど、花嫁は幸せになれると信じられていました。
春、数人の若者達が花を探しに村を出ました。

許嫁のパルに「お花たくさんとってきてね!」とピアは無邪気に言ってたのです。
数日後、出かけた若者達が次々帰ってくるなか、パルだけがいつまでたっても
帰ってきませんでした。
今年、若者達が持ち帰った花は誰もがいつもの年に比べほんの少しでした。

途中までパルと一緒だった若者に聞くと、花があまり見つからずパルは「山の方へ
行く」と言って止めるのも聞かず言ってしまったのだそうだ。
山の方の湖には男を惑わす妖精がいると信じられていたのです。
妖精は湖に近づいた男から命を吸い取って何千年も生きてると言うことでした。
話を聞いたピアはいてもたってもいられなくなり、パルを探しに行くことにしました。
と、いっても周りに話したら止められるのは確実なので、怖さに少し身震いしながら
夜中こっそり家を村を出ました。

村を出てから太陽が二度昇った日、ピアは小さな湖の前にいました。
湖面は静かに空の雲をうつしていました。
もしかしてここが妖精のすむところか?とも思いましたが恐いより疲れをいやしたい
気持ちの方が強く顔を洗い、水を飲みました。

一息入れてると何かがいる気配を感じました。
「可愛いお方。どこから来たの?」と、柔らかな声が聞こえました。
見ると水の中からすっと現れたのは美しい女の人でした。
美しいけど、人間ではないような邪悪な雰囲気もあります。
「どこから来たの?お疲れなら私の屋敷で休んでいらっしゃいな。」
とさらに優しい声で再び言いました。

びっくりしたのでピアは口がきけませんでしたが、この女が噂に
聞く妖精だと気が付きました。
黙ってるピアを見て、すっかり自分の虜になったと思いこんだ
妖精は「さあさあ、すぐに行きましょう。」とピアの両腕をとりました。
矢筒を背負ったピアを少年だと思ったのです。
妖精はピアを水の中に引きずり込み、湖の奥底へ向かいました。
水はとても冷たかったけど、不思議なことにピアはちっとも苦しく
ありませんでした。

湖の底には妖精のすむ屋敷がありました。
妖精はピアから手を離し、屋敷の中にピアを招き入れました。

「ほら、これすごいでしょう」と妖精が指し示す先には、ピアが今まで見た
こともない大きな動物がいました。
ピアは名を知りませんでしたがそれは「太古に生きてた象」でした。
妖精が昔、冷たい湖の底の方で氷付けになってる「太古に生きてた象」
をみつけて召使い達にこの屋敷の中庭に持ってこさせて飾ったのです。

屋敷の一室には妖精が連れてきた人間や動物たちが眠るように
立っていました。
妖精はこうやって自分の美しい獲物を眺めて楽しんでいたのです。
お腹がすいて「命」がほしくなったら、獲物から命を吸い取るのです。
妖精は、可愛い少年だと思ったピアをまずはここへ眠らせて置いておこうと
考えてました。この子の命はとりわけおいしそうだと思いながら。

並んでる人間の中にピアはパルの姿を見つけました。
目を閉じて立ってる姿はまるで死んでるようにしか見えませんでした。
ピアの心に怒りがこみ上げ妖精にねらい定めて弓矢を構えました。
「パルに何をしたの。パルの目を覚まして。」
その声を聞いて、初めて妖精は自分のまちがいに気が付きました。

「まあ、私をどうする気?」「彼、死んじゃったの?」
「今はただの抜け殻ね、私が命を取ったから。」「彼をもとにもどして」
「そうねえ、どうしようかしら・・・」
ピアと話してる間も妖精は矢尻の先から逃れようといろいろ考えていました。
この剣幕では命を帰してやらねば、矢から逃れられそうもない。
ここは素直に戻してやるか、ならば・・・・。
彼女は根っからのいたずら好きだったのです。

妖精はパルの頬に手をあて、目を閉じしばらくじっとしてました。
ピアは油断なく妖精に矢を向けたままでした。
やがてパルの頬に赤みがさし、目を覚ましました。
二人は再開を喜び合いました。

「急がないとあぶないわよ。」と言うことだけ残し妖精は笑って姿を消しました。
二人は気が付きませんでしたが妖精は庭へ出向き「太古に生きてた象」
にも命を与えていたのです。
これが二人を踏みつぶしたらおもしろい、と思ったのです。
永い眠りから目覚めた「太古の象」は、ここがとこかもわからず
そして安らかな眠りをじゃまされたことが気に入らずいらだち、目の前にいた
ピアとパルに向かって今にも踏みつぶさんばかりに突進してきました。

ピアとパルは屋敷の入り口に走ってゆき急いでドアを開けました。
外で出ると、来るときとは全く事情が違っていました。
来るときは妖精の魔法に守られていましたが、今度はそうではなかったからです。
体は何かに捕らえられ引っ張られるように浮かび上がっていきましたが
水は氷のように冷たく、体中が凍ってしまいそうでした。
息もできず、思わず水を飲み込みそうになるのを必至にこらえ、それでも
二人は互いの手を離さず堅く握り合っていました。
二人を追いかけていた「太古の象」も勢い余って屋敷の外ででてしまったので
同じ目に遭うことになりました。

やっと湖面に浮かび上がると岸辺に泳ぎ着き、二人はようやく清涼な空気を
胸一杯吸い込みました。
「太古の象」も浮かび上がりあっぷあっぷしてました。
「たすけて、おねがい!」と「太古の象」が言いました。
「お前は僕たちを踏みつぶそうとしたじゃないか。」
「だっていきなり起こされて、お尻をつねるんだもの」と「太古の象」
二人は泳いでいって「太古の象」を岸辺に引っ張り上げました。

二人に、とりわけピアに優しく介抱された「太古の象」はすっかりおとなしく
なりました。
お礼にと「太古の象」は二人を自分の背に乗せて、村まで送ってくれました。
「太古の象」はおいしいジャガイモをごちそうになりしばらく村に滞在しましたが、
昔々仲間と暮らした山の方が恋しいと山へ帰ってゆきました。
村の誰も知ることはありませんでしたが「太古の象」は山の万年雪のある
上の方で暮らしたそうです。

夏には、二人の婚礼が行われました。
花嫁のショールは白いままでしたが、二人は幸せに暮らしたそうです。

               □□□おしまい□□□


<2009−06−11追記>
「まんがまんだら」は公開を終了いたしました。
ご訪問ありがとうございました。
posted by みどり at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作お話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月21日

創作お話「戸丸さんの猫」

「創作お話」は「まんがまんだら」の掲示板に遊びに来てくださった方から
「お題」を三ついただいてこれを元にお話しをつくってる「三題話」です。


創作お話:「戸丸さんの猫」

「いったいどこから入って来るんだろ?」
ちょっぴりお金持ちの戸丸さんがここ数日、不思議に思ってるのは毎晩家の中に
現れる一匹の猫のこと。
「お前がちゃんと戸締まりしないからだろ」と奥さんに文句を言ったけど
「そんなはずありませんよ!」と怒られた。

毎晩そろそろ寝ようと思う頃「ニャー」と声がしたと思うともう足元に猫がいる。
「ほら出てけよ」と、出してやってますが。

ある晩、戸丸さんは今でうたた寝してふと目がさめて驚いた。
部屋にかかっている絵の猫が大あくびしてるではないか。
うーーんとばかりに伸びをすると、プイッと絵の外へ飛び出した。
あたりをキョロキョロすると、戸丸氏の前まで悠然とやってきていつものように
「ニャー」
ドアを開けてやるといつものようにうれしそうに出ていった。
あぜん、ぼーぜんの戸丸さん。

試しに、毎日夜中まで起きててわかったのはこの猫、夜中になると
絵の中から出てきてどこかへ行ってしまうのに、朝になるとちゃんと
絵の中に戻ってきてるということ。

戸丸さんから話を聞いた奥さんはびっくりしつつも「あるかもしれないわねえ」
と妙に納得。
実はこの絵は数週間前、奥さんへの誕生日に買ってあげた物でした。
仕事がなかなかうまくいかず今まで奥さんにはさんざん苦労をかけてきた
罪滅ぼしにと、ちょっと高かったけど奥さんが好きだと言ってた画家の
絵を買ったのでした。
奥さん曰く、この画家は旅をしながら絵を描く人で、放浪の画家としても有名
なんだそうだ。

「いい絵は作家の生気が乗り移るのかもよ」て、奥さん。
「そんな馬鹿な」
「ともかくあなた、このことは他の人に話しちゃダメよ」
「うん・・・」
と、言ったもののこんなすごいこと黙ってられるはずありません。

もちろん最初は誰も信用しなかったけど戸丸さんが「嘘だと思うなら見においでよ」
なんて言い出して家にご招待。猫の方は相変わらず絵の外へ遊びに出るもん
だからこの話はアッという間に世間に広まってしまいました。

そのうち「戸丸さんちに泊まって寝てる時に、猫に顔をなめられるとお金持ちに
なれる」なんて噂まで流れだし、TVが取材にも来たけどそんな時は猫は絵から
出ないのでした。

ある日、戸丸さんちに見慣れない人がやってきました。
大きなリュック背負って、帽子に花まで付けてひげ面の、なんだか「ムーミン」に
出てくるスナフキンをむさ苦しくしたようなおじさんです。
戸丸さんにはわかりませんでしたが、奥さんにはすぐわかりました。
この人こそあの絵の作者、歩乱(ぽらん)さんでした。
「いやー私の描いた絵がご迷惑かけたようで申し訳ないです」と歩乱さん。

絵から出歩く猫の話は歩乱さんの耳にも届いてました。
「あの絵は一緒に旅をしてかわいがっていた猫でしてね。死んでしまったので
思い出にあの絵を描いたのです。画商に渡したらすぐ売れたと聞きました。
そのころからですかね、旅先で夢の中にあの猫を見るようになりました。
たまたまこの間、泊まった宿のテレビであの絵の話を聞いてなるほどと思い
ましたよ。
私もあの子も旅が好きでしたから・・・じっとしてるのがイヤだったのでしょう」
「あの猫はあなたのとこへ会いに行ってたんですね」と、奥さんちょっと感心。

「そういうことですね。しかしそれではせっかく絵を買ってくださったのに困る
でしょう?」「いや、そうでもないんですけど・・・・」と、戸丸さん。
猫のことで有名人にもなってましたので、まんざら悪い気はしてなかったのです。

「猫が戻ってくるうちはいいけど、そのうち帰らなくなる可能性がありますよ」
「ええ、そんなのイヤですよ。この絵が気に入って買ったのに」と奥さん泣きそう。
「何とかしますよ。あの猫を夜遊びさせない方法が二つあると思うんです」
「二つですか?」と戸丸さん。
「一つはこの絵を大きなかごの中に入れてしまうか、この猫の絵の上にかごの絵
を描いてしまうのです」
「そんなの絶対ダメです」と戸丸さんと、奥さん。
「そうでしょうねえ。では、こういうのはどうでしょう・・・・」


数時間後、歩乱さんは戸丸さんの家をあとにし、また旅に出かけてゆきました。
そしてその日から、絵の中の猫は外に出なくなりました。

歩乱さんは、戸丸さん夫妻の了解をもらって絵をほんの一部描き変えたのです。
ぱっちり開いてた目を閉じたのです。
絵から抜け出す猫の噂も消えてゆきました。
戸丸さんは、ちょっぴり寂しくもありました。毎晩のように足元にすり寄ってきてた
あの猫はとってもかわいかったなあ、と今にして思うのです。

目を閉じた猫は、幸せな夢を見て昼寝してるようです。
毎晩この絵を見てると戸丸さんの心も、なんだか安らかになるのでした。

(おしまい)


<2009−06−11追記>
「まんがまんだら」は公開を終了いたしました。
ご訪問ありがとうございました。
posted by みどり at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作お話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする