2006年08月25日

ヨロヨロン 束芋(たばいも)

「ヨロヨロン 束芋」



「ヨロヨロン 束芋(たばいも)」 @ 原美術館
6月3日〜8月27日まで

8月23日(水)に観に行っています。会期終了前にご紹介しておきたいと思って
急いで書くことにしました。

束芋(たばいも)、という不思議な名前(本名は田端綾子)を名乗っているこの方は
1975年生まれの女性です。
この展覧会があるのも20日にNHKで放送された新日曜美術館のアートシーンで
紹介されたのを見てから知りました。

束芋さんの事を初めて知ったのは数年前の、NHKの美術番組「美と出会う」を見て
からです。
映像作家と、言っても良いと思いますが、単に「映像作家」という範疇には収まらない
作品を作っている方だと思えます。
たとえば1999年京都造形芸術大学卒業制作として学長賞を受賞した「にっぽんの台
所」は和風の部屋が作られて部屋の奥と左右の三面に違う映像が投影された作品。
正面では、台所で料理をしている醜悪な中年女性の姿。
煮立っている鍋の中には人間の脳らしき物。横の映像では街の様子。
ビルの屋上から少年が飛び降り、台所の電子レンジの中では政治家がくるくる回って
叫んでいる。リストラされた男性は台所の女性にまな板の上で包丁で首を切られる
かなり毒のある展開を見せます。
しかし絵の線、色彩はどこか浮世絵を思わせとてもきれいです。
どうもコンピューターで浮世絵の色を取り込んで処理した物らしいです。

TVで紹介された作品群を初めて見た時は、かなり毒のある映像に嫌悪感を感じ、
その一方で作者が若い女性なので、作品とご本人とのギャップにびっくりしたもの
でした。
映像の中には社会への批判・・・というとありきたりですが束芋さん自身が感じた
社会の現実と不条理さが描きこまれているようです。

今回の展覧会では日没後にしか見られない作品があるというし、美術館は水曜
のみ8時まで開館で、会期は27日まででは23日しかチャンスがないとあわてて
行ってきたのです。

夜7時に会場に着くと、中はすでに多くの人でごった返していました。
原美術館は行ったことがある方はすぐわかると思いますが、とても小さな美術館です。
こんな大人数で時間内に作品を見られるだろうかと心配になりました。
観に来ている方を見回すと、ほとんどが10代、20代と思われる方達。
束芋さんは、若い人たちに大人気のようです。


「にっぽんの台所」は日本の部屋(かなり変形です)が作られていて鑑賞できます。
後は小さなモニターで鑑賞できる作品群があり、通路にはドローイング作品も
ありました。


今回の展覧会用に作られた作品は「ギニョラマ」「公衆便女」「真夜中の海」です。

「ギニョラマ」
外に設置されたスクリーンに投影された映像を、美術館の中の窓から眺める作品。
なので、これが夜しか見られない作品です。
映し出されているのは「手のひら」。
束芋さん自身が、幼い頃からアトピー性皮膚炎に悩まされたそうでその経験が、
自分の手なのに、自分の思い通りにならない手のことが描かれているようです。

一つの手のひらに、別の手のひらが合体し分離し、めまぐるしく変形していきます。
オレンジや青を使った水彩画のような色彩はきれいなような、気持ち悪いような・・・
形を確認したいと思いつつ、よくわからないまま終了してしまいます。
描かれた物を確認するためにも、何度でも見たくなってきます


「公衆便女」
奥と、左右の三面を使った映像作品。
トイレの前にやって来たのは、ランドセルを背負ってパンティのみはいている女性。
個室に入った女性は便器の中へ携帯電話を落としてしまい、水着に着替え便器の中へ
ダイビングして消える。
大きな手のひらにのった大きな蛾。飛んでいってトイレの中に入っていくとカメラの
シャッターが切れる音が響く。盗撮か?
不特定多数の人が集まる公衆便所。
いろんな人がいるのに他人には全く無関心の女性達に束芋さんは興味をもち、作品
化したようです。


「真夜中の海」
これを見るためには並んで長時間待たねばなりませんでした。
2階のバルコニーから下に映し出されてた映像を見るのですが、場所が狭いから
一度に5,6人しか見られないからです。
ひんやりした部屋の中。真っ暗海に波が寄せています。
時々スポットライトが当たるように見え来るのは、動き回る藻のような物体。
すぐ消えてしまうのですが、どうも海の中・・・と、思っていたのは体の中のようです。
体の各パーツ、内蔵の各パーツ、それぞれがいったん分解されて、無秩序に合体
した世界の中を「藻のような物」は動き回っているのです。

プログラムを読むと束芋さんの言葉でこう紹介されていました。
「としを重ねた体内にはカミノケが蠢(うごめ)く。魚のように動き回るカミノケは
共存することを拒めば内蔵に悪影響を及ぼしかねない。日本独特のこのようなこんな
関係性は、私の意識に強く刻み込まれている」
私自身はそんな関係性(言い伝え)は、全く聞いたことがありませんが、よく見ると
気持ち悪いのに、静けさと美しさも同居しているこの作品は何度でも見たくなりました、



「真夜中の夜」を見るために列の最後尾につくと、次に来た方が「今、束芋さんが
きてますよ!」とサインをもらったカタログを見せて教えてくれました。
おおおーっ、と思い私も急いで売店へ。
カタログを買うと、その横で束芋さんはさらさらとイラストを描いて、サインを入れて
くれました。
ごくごく普通のお姉さんでした(あたりまえですが)
一番下に載せたのはこの時のサインです。線が印刷したみたいにきれいです。

別の部屋では、「ギニョラマ」「公衆便女」「真夜中の海」の原画の展示がありましたが
やはり線がとてもきれいでした。



「真夜中の海」を見るための列に並んでいる間に、美術館の方とお話ができましたが
この日束芋さんが来ることは、美術館の方も知らなかったそうです。
この展覧会が始まったばかりの時はそんなに混まなかったそうですが、もう終了間際
になったせいか館員のかたもびっくりするほど混んできたのだそうです。

それに、この日の開館は8時までだったはずですが「来た方には、作品を観ていた
だきたいので」と時間を大幅延長して開館してくれました。
私が「真夜中の海」を観たのはもう9時だったのです。
9時25分まで開館してくださった原美術館に大感謝です。

土日にこの展覧会を観ようと思った方はぜひ、時間に余裕を持って出かけてください。

束芋さんサイン


posted by みどり at 09:05| Comment(2) | TrackBack(1) | 美術・展覧会・イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
みどりさん、こんばんは。
コメントとTBをありがとうございました。

束芋さんのサインなんて素敵ですね!羨ましいです!
今回の原美は大賑わいのようですね。
夜もやはり混雑しておりましたか。
この展覧会で束芋さんの人気にさらに火がついたかもしれません。凄い方です。

真夜中の海がこれまでの作風と少し違っていて面白かったですよね。
冷風を浴びながら見るのもこの季節にピッタリです!
Posted by はろるど at 2006年08月26日 00:13
はろるどさん、おはようございます。
原美術館は、なんとなく地味でよほど美術好きの方でないと知らない美術館ですが今回は大盛況の
ようですね。束芋さん人気すごいです。
「真夜中の海」は今までの少し毒のある作品とは違ってクールな感じが良かったですね。
私も今回観た作品群の中ではこれが一番好きになりました!
Posted by みどり at 2006年08月26日 08:00
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