
ぴあフィルムフェスティバルの軌跡Vol.1
「家、回帰」「変形作品 第2番」「二度と目覚めぬ子守歌」@東京国立近代美術館フィルムセンター
7月17日(木)に観に行っています。
今年で30回目を迎える自主映画のコンペティション「ぴあフィルムフェスティバル」
の過去の入賞作品を紹介する上映会です。
今回見たのは3本。
「家、回帰」 1985年(第8回)入選作。18分、8ミリ
監督:石井秀人
「去年、祖父が死んだ」というナレーションで始まる家族のドキュメンタリー。
祖父の遺影と、誰もいない病院の廊下の映像が二重になり作者の語りが延々
続く冒頭。長かった闘病生活を暗示させるようなシーンです。
作者の目は、まだ健在だが介護が必要な老いた祖母に向けられています。
作者の母が介助しながらの祖母の入浴シーン。背中の曲がり、しなびた身体が
痛々しい。
家族として避けられない、身内の老いや死を見つめた作品のようです。
「変形作品 第2番」 1985年(第8回)入選作。30分、8ミリ
監督:黒坂圭太
冒頭現れるのは暗い画面に細かい亀裂。まるでスクリーンそのものがひび割れた
ような錯覚を覚えます。
明滅を繰り返し画面も荒れ地の地面のような、壊れた壁のようなものが見える。
炎を吹いているバーナーのような轟音も聞こえ、まるでスクリーンそのものが激しく
加工されていくような感じです。
しかし、これが延々30分続くのですからスクリーンを見続けているのはかなり苦しい。
申し訳ないけれど、この作品の何かいいのか、何がおもしろいのが全く理解できませんでしたm(__)m
「二度と目覚めぬ子守歌」 1985年(第8回)入選作。27分、8ミリ アニメーション
監督:原田浩
今回の上映会で一番見たかったのはこの作品でした。
<あらすじ>
両親を亡くし祖母の元に引き取られた小学生の男の子「出っ歯」
クラスメートからは執拗にいじめられ、暴力すらうけているが助ける者はいない。
「出っ歯」が持っていた小さな花束も踏みにじられてしまう。
それは入院していた祖母にとどけようとしていたもので、祖母はその直後自殺してしまう。
「出っ歯」の怒りはついに爆発、いじめっ子達にナイフを持って復讐してしまう。
冒頭、映画館での上映前のようなアナウンスが流れて、その遊び心がおもしろい。
しかしその後はすごい。
いじめられっ子の「出っ歯」、おせいじにもかわいくない。
いじめられ続けたせいか子どもとは思えない醜い顔、大きな出っ歯。
薄汚れて、ごみごみしてまるでゴミ箱のような街。
開発の名のもとに破壊される町、轟音と共に飛び立つ巨大な飛行機、耳をふさぐ人々。
一人の「出っ歯」に三人の男の子が暴力をふるう。
もちろん反撃する「出っ歯」ですがチビの彼には力がない。
「出っ歯」が、倒れたところを助け起こしてくれた高校生(?)のお姉さんを性的に襲って
しまう妄想場面まであって恐ろしいくらい怖い。
「出っ歯」がナイフを持って三人に反撃する場面もリアルに、執拗に描きこまれて
当然血しぶきがあがる。スクリーンから「怨念」が吹き出してくる感じです。
ラストは「出っ歯」の顔が、フィルムを逆回しするように白い紙の上のスケッチに
戻るところを見せて終わります。
ようやく悪夢の世界から脱出できた事を実感させるラストシーンでした。
「いじめ」をテーマにしているけれど、映像のなかに込められたエネルギーが半端じゃ
ないです。
しかも内容が内容なのでTVではとても放送できない作品でしょう。
この作品、外国でも紹介されているようです
チラシの解説によると、作者の原田さんはアニメーターとして活躍後、フリーになっているそうです。
<2008-07-20追記>
原田さんこの作品の後、1992年に丸尾末広作「少女椿」をアニメ化しています。
これは観ていませんが、かなりの問題作らしくDVD化もされていません。
さらにこれも知らなかったのですが2006年にTV放送されたアニメの「妖怪人間ベム」の監督もされていました。
私が知ってる「妖怪人間ベム」は1960年代に作られたTVアニメの方。
約40年ぶりにアニメ化されていたとは知りませんでした。


